Story
あらすじ
何か物事に感激し、奮い立とうとすると、どこからともなく聞こえてくる「トカトントン」という音。この音を聞いた途端、なにもかもがどうでもよくなってくる――。 玉音放送から始まるこの奇妙な現象。仕事へも、恋愛へも、芸術へも、新しいイデオロギーへものめり込むことができない〈虚無〉を描写した、ユーモア漂う傑作短編をとりあげます。並行して展開するのは、恋という名の革命に胸を焦がす女性のモノローグ。太宰治の代表的作品『斜陽』の物語が交錯します。
チェーホフに長年取り組み、近代についてこれまで一貫して考えて来た三浦基が、より明確な〈戦後〉という切り口から日本の近現代を考える本作。モスクワでチェーホフ作品の上演を成功させ、来年5 月にはロンドン・グローブ座での招聘公演が決まるなど、ますます活躍の幅を広げている地点の最新作です。
撮影:渡辺好章 昭和19年(1944年)/日本近代文学館提供